多くの人がプロモーションの企画やクリエイティブの制作時に「ターゲットは誰か」「ターゲットは誰にしよう」と頭を悩ませ、納得できるターゲット像、または理想のターゲット像を決めていると思います。

マーケティングにおいて”ターゲット”という考え方は欠かせませんが、私はよく考えが堂々巡りになってしまい、そもそもなんだっけ…と思考が迷子になってしまいます。そんな時に言葉の意味を深く捉えつつ、単純化することで頭の中がクリアになることがあります。今回はターゲット論という迷路に入ったお話と、例をもとにこんな考え方でターゲットを決めたらうまくいったというお話をします。

そもそもターゲットとは…

「そもそも…」と考え始めるのがはじまり。

20代の男性で、会社員で、趣味はアウトドアで、休日は友達とよく遊んでいて…
一般的にターゲットは誰ですか、という話題になると、大体この形式が多いと思います。
「あーいそういそう」とか「っぽいな」という具合に設定していくのですが、数年前のある日、こんな人が実在しているのか…そもそもターゲットって、架空の人物を詳しく想像して、その人物が好きそうなクリエイティブであったり、接点が多そうなプロモーション構造を考えたりするために決めたのか…と考えが迷子になりました。

これでは全て妄想であって、事実と見合わせた時に整合性が取れないのではないか、果たしてこのまま進めて成果を出せるのだろうか。悩みながらまずはGoogleで検索します。

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いろいろな言葉がたくさん検索結果に出てきますが、その中でも「ターゲットとは商品の販売活動で狙った購入層」という言葉に衝撃を受けました。単純明快、ターゲットとは販売活動でどんな人を狙うのかということである。と書いてありました。
当たり前だと思いますよね。私もそう思います。しかし、販売活動で狙う人は実在していなければ購入に繋がらないワケです。

20代の男性で休日はアウトドアして、音楽フェスの常連で…こんなターゲット設定をして、販売活動でこの休日アウトドア系男子を狙っても、実際に商品を買ったり、サービスを利用したりしている人たちって、設定したターゲットとは違う全く違う人たちだったということがあります。

つまり、それまで私が設定していた社会学的なアプローチだけでは、企画を考えている時に設定したターゲットと、実際の顧客とに乖離が起きていたのです。

ターゲットの定義をもう一度確認。

「ターゲットとは今回の販売活動でどんな人を狙うのかということである。」

これです。
前述の年齢や性別、趣味という社会学的な視点からアプローチから始めてしまうと、顧客の年齢や性別と設定したターゲットが乖離してしまうことが多くありました。

どれだけ商品が売れたり、サービスの利用者が増えたりして結果が出たとしても、事前に設定したターゲットが反応していなければ、そのプロモーションは戦略的とは言い難く、再現性も低いのでは…と。

しかしデータ分析を行いプロモーションの結果をもっと深く考察すると、顧客にはある共通項があり、その商品やサービスを望んでいる人、その商品やサービスで満たせる欲求を持っていた人たちでした。それもそのはずです。だから商品を手に取ったり、サービスを利用したりしたわけです。

と言うことは、販売活動で狙うべき人=ターゲットとは、”対象の商品やサービスで満たせる欲求を持っている人”ということになります。この人たちが実際に購入または利用という意思決定をして、お金を払って欲求を満たしているわけです。

この定義であれば、事前に設定した社会学視点のターゲットと顧客の属性が乖離していても、欲求部分では共通項があったのではと考えられます。

誰に対してコミュニケーションをするのか、つまりプロモーションにおけるターゲットとは、「どんな欲求を持っている人なら、その商品を手に取ってくれるのか、サービスを利用してくれるのかを見つけること」と定義しました。
一言で表すなら、
ターゲットとは、プロダクトまたはサービスが提供する価値で欲求を満たせる人と言えます。

欲求を持つ人たちに対して

生活者の欲求を見つけてもそれだけではコミュニケーションは成立しません。
インターネットが社会に浸透して数十年経ちますので、安易なプロモーションでは生活者も反応しません、それどころか炎上してブランドを毀損することもあります。

どこでどんなアプローチをしたら生活者が反応してくれるのか、その企画に説得力と納得感を与えるため、社会学的な視点で、生活者の具体的な生活や趣味を設定してターゲット像を決めていたわけですから、好意的な反応を引き出すクリエイティブを制作するため、欲求だけではなく、さらに条件を考えます。

社会学的な視点から欲求視点へ

このタイミングでも私は考える視点をこれまでの社会学的な視点から生活者の欲求に変えてみました。例えば、
20代男性、東京で働く会社員、休日はアウトドア、音楽フェスには毎年参加する常連…
という社会学的な視点から、
仕事の疲れやストレスをアウトドアで発散したいと思っている人…
このように生活者の欲求を言語化することにしました。

欲求から考え始めると「仕事の疲れやストレスをアウトドアで発散したい」”だから”休日はアウトドアに行くし、音楽フェスには毎年通っているとも考えられます。
その人の年代は20代ということもあるでしょうし、50代ということもあると思います。当然性別は男女どちらでも該当します。”したい”なので今はまだできていないのかもしれません。
その場合は休日のアウトドアに憧れを持っているけど、現実では休みの日は1日寝て過ごしてしまう、YouTubeでアウトドア系の動画を見続けてしまう日もあるはずです。

同じ欲求を持っていても、人によって情報量や実行の段階、検討の度合いが違っています。これらの違いをターゲットタイプとして定義することにしました。

個人差をターゲットタイプとして定義する

今回の場合で考えてみると、

  • 習慣タイプ:長年ストレスや疲労をアウトドアで発散している人。
  • 強行タイプ:思いついたら行動。あー疲れた週末どっか行こうで即断即行しちゃう人。
  • 擬似体験タイプ:まずは調べる。SNSとか動画とかで旅行とかフェスの動画みている人。

同じ欲求を持っていましたが、タイプ別で考えるとそれぞれのタイプには行動に違いがあります。さらに分けたタイプは段階的になっているようにも見えます。さらに擬似体験タイプが見ている動画が実は他のタイプの人が投稿している動画かもしれません。
習慣タイプは誰かに見て欲しい、知って欲しいと言う側面があるのかもしれません。

この中には既に顧客になっているタイプがあると思います。既存顧客と同じ、もしくは似たタイプにコミュニケーションを行い手堅く顧客を増やしていくのか、これまではリーチできていなかったタイプを獲得するため、新タイプにコミュニケーションを行うのか、ここで戦略の軸となるターゲットタイプを決めます。

私はこのタイプを導く過程で、細分化しすぎて無数にタイプが出てしまうことがありましたが、出し切ったあとでよくよく見返すとグルーピングできて結果3タイプくらいになることが多いです。

ここまでで、生活者の欲求、ターゲットタイプまで決めることができました。

行動を想像してみる

次にターゲットにどうやって情報を知ってもらうのか、コミュニケーションの構造と接点を考えます。
これはすごく簡単で、自身の行動をもとに考えたり誰かに話を聞いてみたりすると現実味のある構造を作ることができます。
先の例を参考にすると、擬似体験タイプであれば、実店舗よりもオンラインショップ、文章よりも映像といった具合に、接触できそうなチャネル候補が考えられます。ここでは仮に、YouTube、SNS、ECサイト(この場合きっと主にウインドウショッピングですが)をよく見ているとします。接点を決めたら、あとはそれぞれのメディアでどんなメッセージを発信するのか、どんな行動を起こせばターゲットが反応してくれるのかを企画します。ここからはクリエイティブの力を発揮する段階になります。かっこいいクリエイティブを制作チームが作ってくれることを期待しましょう。

と言う進め方をすると、経験上うまくいかないことが多いです。このままの情報をクリエイティブチームに伝えて制作を進めてもらおうとするとかなりの確率でターゲットは?と聞かれてしまいます。おかしいですよね。これまでにターゲットを定義して、さらにターゲットを決めてそれを伝えたと思ったのに…

とは言え、クリエイティブは最初に生活者と接することが多いため、ブランドイメージを左右する重要なパートです。正確に戦略を伝え、ターゲットの欲求を刺激するような表現をしてもらうために、ターゲットが憧れる存在、いわゆるアイコンとなる存在を決めてみました。一例をあげるならターゲットが思う「こうなりたいかっこいい自分」をクリエイティブで表現するため、このかっこいい自分を決めるわけです。

ターゲットが目指しているかっこいい自分を見つける

例えば…
20代の男性で休日はアウトドアして、毎年たくさんの友達と音楽フェスに通っていて…

聞いたことないですか、これ。
堂々巡りしていますよね。きっとこれが迷子の原因でした。

当たり前ですが、同じ言葉でも受け手によって意味が変わることがあります。
ターゲットと言う言葉を使い回さずに、ここでいう”かっこいい自分”を例えばクリエイティブモデルなんて言い方をするのはどうでしょう。

このクリエイティブモデルは理想の自分なので、架空です。想像です。空も飛べます。
しかし情報が多ければ多いほど、チームでイメージを共有できると思いますので、具体的に想像します。名前から年齢、性別、生い立ち、趣味、仕事、好き嫌いなどなど…
ここまで決めるとキャスティングにも役立つと思います。

クリエイティブチームに制作を依頼するときには、ターゲットとクリエイティブモデルを共有するときっと良いクリエイティブを制作してくれます。
良いクリエイティブには、ターゲットが好意を抱いたり、欲求を刺激されたり、思わず行動したくなるビジュアルやコピーが必要不可欠です。

きっと見かけた広告に自分の理想を投影することで刺激されるのだと思います。
ドラマや映画をみて共感して泣いてしまう、笑ってしまう構造と似ていると思います。

ちなみにここまで具体的な商品やサービス名を出していませんが、欲求を見つけられれば、商品やサービスの持つ価値、価値とは欲求を満たせると言うことを生活者に伝えられれば、自ずと反応を得られます。

まとめ

コミュニケーション構造を作るとき、ターゲットの欲求を見つけること、タイプを見つけること、クリエイティブモデルを決めること、この三段階を経て考えています。

“誰に”を明確にして、コミュニケーション構造の軸にすると、クリエイティブの品質向上にもつながりますし、プロモーション実施後にデータを分析すると、設定したターゲットに情報が届いていたのか、どんな反応をしたのかを知ることができます。
この情報がわかると、次回の企画立案ではより深い考え方ができるようになり、さらに効果的、効率的な戦略を検討できます。

H2Oは解析の領域において、特に高い技術力を持っていますので、事実に基づいた戦略とクリエイティブをご提供できます。

些細な疑問が発端ですが、同じ疑問を持ちながら、なんとなくやり過ごしている方の参考になれればと思います。

ちなみに欲求にも段階というかタイプがあると思っていて、欲求の範囲が広がるほど多くの人がターゲットになり得ますし、大きな変化、衝撃をもたらすコミュニケーションになると考えています。大きくなると誰かに言われて「そうだよね!」となるような、無意識の欲求、いわゆるインサイトのお話に派生してしまうので、それはまた別の記事で書ければ…。

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